近現代の資料では、紐で縛られたり、分厚かったり、汚損や破損が目立つような資料も多くみられます。利用が困難な資料として修復対象になり、修復予算は付かずそのまま置かれるというケースが多いようです。また容器の予算が付いても、現在の形状が「原形保存」の原形とみなされて、そのまま採寸して容器製作が外注され、資料は不自然で使いづらい形態のままで保管されていることも多いようです。これはただの容器入れであって、「リハウジング」ではありません。家のリハウスと同じように、利用しやすくするのが「リハウジング」です。
「 資料の形態を変えずに収納を改善して使いやすくし、破損や汚損を増やさない予防処置 」のこと。
①収納を改善する: 排架を変える・包材を替える
②破損や汚損を増やさない: 紐や汚れを除去する・分冊する
「折りたたみ」「大きい・小さい」「分厚い・薄い」「積み重ね」「大きな箱」「塵や埃が付着」「汚い」「紐で縛っている」「綴じ緩み」「グシャグシャ」「そのまま排架した資料」
外見からは、ひどく傷んでいるように見える資料も、中の本紙は、破損や劣化がひどくないことが多く、リハウジングをすることで改善できます。
「原形保存の原則」は、現在の扱いにくい状態を変えてはいけない、という原則ではありません。
リハウジングは、資料の形態を変えることなく、利用できない現状の資料を適切な状態、形状に変える処置なので、アーカイブの基本原則に則っています。資料の現状に変更を加える場合は「記録」に残します。
特に、近現代のアーカイブ資料は古文書と違って、紐で縛られたり、折りたたまれていた場合、それは現状であって、原形と言えるものは多くありません。現状が、資料や利用者にとって不適切であれば、リハウジングして、使いやすく収納改善するべきです。
リハウジングの効果には3つのポイントがあります。「未経験者が行うことができる」「定型の包材を用意し使う」「きれいになる」
人件費と材料費を抑えて、たくさんの資料を素早くきれいにできます。利用者が安全に手に取って安心して活用できる効果を実感できます。
”the American Archivist,Special Preservation Issue (1990)”や”Preservation and Conservation for Libraries and Archives(2005) chapter3:Simple Preservation Techniques : Rehousing library and archive materials” などの文献によると、「予防の手段」であり、大量で多様なアーカイブ資料の保存管理(Holding Maintenance)における基本作業、と定義されています。
用語としては、アメリカで1990年代から使い始められ、古い箱やフォルダを取り替えることや最初に資料を包材で包むことを指して使われ、北米・オーストラリアに定着したそうです。ドライクリーニング、包材の使い方などが紹介されている文献もあります。オランダやポーランドではRepackingというそうです。
イギリス国立公文書館のWebにあるPreparation of Recordsは、写真付きのリハウジングのマニュアルです。旧式バインダーや古いゴム紐の取り替え、ファイルボックスの使い方、分厚い簿冊は5㎝以下になるように分冊するなどの記載があり、作業の参考になります。
海外と日本のアーカイブズ事情は異なりますが、日本の国立公文書館においてリハウジングによる歴史資料の保存の有用性が認められました。2013年度の劣化状況調査、および2014年度のリハウジング試行調査研究の結果に基づき、つくば分館でリハウジングが実施されています。
スマートファイリング・ラボでは、スマファイのファイリング用品を用いて、お客様の未整理資料をリハウジングの手法で保存ファイリングしています。お客様と基本方針を決めた上で、順序や括りなどを記録、ドライクリーニングを施し、文書の折れやはみ出しを整形します。資料の状態に応じて、封筒や個別フォルダで養生しながらファイルボックスなどを用いて収納を改善します。
必要に応じて、ラボの母体の東京修復保存センター (TRCC)において、適切な修復を施します。もちろんスマファイシリーズを購入して、インソーシングにて実施することもサポートします。