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香蘭女学校・アーカイブ資料整理作業について
校史編纂等で収集されていた資料を再整備することになりました。内容確認のため夏休み中で使われていない教室の机に資料を置き、並べ切らない資料は、段ボールに入れられたままの状態でした。 教室は二学期が始まるまでに使える状態にしなければならないとのこと。アーカイブ資料は、何らかの形で再収納されなければなりませんが、どのようにしたらよいのか手が付けられないところで、立教学院に相談の連絡が入りました。日本聖公会関係で、立教学院と香蘭女学校がつながりがあり、今回発見されたアーカイブ資料の保全と活用について、立教学院展示館がサポートする形となりました。そして展示館の豊田氏がTRCCにお声掛け頂き、本事業に関わることになりました。
今回は作業の期間、諸々の事情から、現地でのリハウジング作業となりました。立教学院展示館からは二名参加頂きました。
〔資料の状況〕
教室の机の上には冊子・和書・封書・書籍・ノート・封筒入・並製本・台紙貼・箱入・コピー・透明フィルム入・額入写真・アルバム・台紙貼写真・写真・紙ファイル・リングファイル・学祭ポスター・パンフレット・スクラップブック・新聞・軸物・卒業証書・カセット等々、雑多な資料が並んでいました。
資料には整理番号もなく、置かれている順序も、原秩序とも関係がないとの説明を受けました。
今回の整理が、香蘭女学校アーカイブの基盤になると考え、「資料の整理のみの観点ではなく、今後寄贈、寄託される資料の整理も念頭に置いたうえで、持続可能な整理・保全環境のベース作りを目指す」ことを目的とすることを提案しました。そのため、収集アーカイブの整理・活用方法などのフォーマットを、両校で共通の形(例えば目録の項目とか、受入の台帳の作成など)にできれば、これからのアーカイブ整理に永続性が期待できると考えました。
関連性判断・タグ(個票)作成
【資料の関連性の判断】
今回の資料に付いて、資料同士の関連の有無など、手掛かりがないか、作業に入る前に確認作業を行いましたが、当学内から自校史に明るい担当者の参加を得られませんでしたので、把握するにはやはり難があることがわかりました。
現状を踏まえることにし、置かれている机、段ボールごとにナンバーを振り、その番号を「ID1」として扱い、それぞれの資料に「ID2」、さらに内容物など細かい分類に「ID3」と番号を振ることにしました。作業期間が短期間であることから、「ID3」については、後日の整理時に行を増やしてもらうことにして、内容量を記載するに留めることにしました。(封筒入れしている資料に10点入っていれば、タグには「1~10」と記載、タブレット入力の際には「*10」と入力)今回付与するIDナンバーは、あくまでも時間に制約があるところでの仮番号であり、後の資料整理の際に新たな資料番号を付与するまで便宜的に用いる、という認識のもとつけていくものです。
【個票(タグ)作成】
恵泉の事例と同じように、紙の短冊で個票(タグ)を作成し、個票にID番号を書き込む方法で行なうことにしました。
資料にタグを挟むことによって、そのあとのドライクリーニングから容器収納を行う際に、資料が行方不明になったり、行き場がわからなくなるような事態を防ぐことができます。そのうち正規の資料番号が決まった段階で、ラベルなどに切り替わるのですが、それまで原状へと辿るトレースを可能にする「道しるべ」となります。アナログな方法であるが、大量の資料を扱う場合には、作業を安全で、信頼のおけるものにするために、最も有効な手段と考えます。
個票(タグ)付与・タブレット入力
【個票(タグ)付与】
タグにIDを書き込んで資料に挟むことが、仮ID付与となります。この作業が、すべての資料に手を触れる最初の機会となります。今回は、本アーカイブ資料の保全と活用について、立教学院展示館がサポートする形となりますので、目録作成から今後の利用も考えたうえで、資料を一点一点丁寧に見ながら、「ID2」以降を付与していく作業となりました。展示館の方にこの作業をお願いしました。
【タブレット入力】
今後も両校の交流を考え、目録の項目に共通性を持たせることが有効であると関係者で共有しました。ですので記録作業の入力項目は、基本の資料管理項目として、立教学院史資料センター使用の項目を参照、必要な項目のみ組み入れた形にし、それをもとに入力フォーム(PDF)の作成を行いました。劣化損傷の状態注記の項目は、国立公文書館でTRCCが行った「特定歴史公文書等の劣化状況等に係る調査研究業務」で、記録の際に用いた項目(劣化・破損状況)をそのまま踏襲することにしました。
入力するデバイスはタブレットで、アプリはAdobe Acrobat Readerを使用しました。
ドライクリーニング
クリーニング作業を行い、資料に付着する埃や塵を刷毛で払いました。この作業は「リハウジング」の大事な作業で、カビや微生物のエサとなるものを、ある程度となりますが、除去することができ、また利用する際に、扱う人の、汚れへのストレスを軽減することができます。
今回は現地作業となりましたので、クリーニングベンチを持ち込み設置しました。これで作業所となった教室の空気を汚すことなく、リハウジング作業を進めることができます。
整形・容器収納・配架
クリーニングを行なった資料は、タグで分けられた資料ごとにスマファイのファイリング用品に収納していきました。使用した器材は、ファイルボックス・個別フォルダ・L字エンベロープ(それぞれA4・A3)、スマファイ・かぶせ箱、ダブルフラップフォルダ、貴重資料保存袋(A2・A3・A4)とその専用箱、その他それでは収まらない資料用に特注箱(青梅の工房で切り出し製作)で、これらの器材に収めていきます。並行して、保管する部屋にスチール棚を設置してもらい、収納を終えた容器を、順次棚に棚に収めていきます。容器には、まだ仮整理ですので、内容物がわかるようにポストイットに内容を記して貼ることにしました。撤収前に時間が取れればポストイットの記載内容を、直に箱に鉛筆で書き込もうと思っていましたが、時間切れでその作業は今回できませんでした。
記録データ抽出
撤収後、タブレット入力したデータを、Adobe Acrobat「フォームの集計」機能を使って抽出しました。(本来、現地作業とデータ抽出作業を別動隊で行い、前日行った作業を翌日午前にデータ抽出し、入力ミスなどの間違いを現場に戻し確認しながら作業を進める流れがベストです)
データを確認し、整えたうえで香蘭女学校アーカイブ・データベースとして、作業レポート・画像と合わせて納品しました。
まとめ
記録作業に65.5時間、リハウジング作業に57時間(ドライクリーニング作業:19時間、容器収納作業:34.5時間、その他:3.5時間)今回は立教学院展示館の担当者2名の参加、また今後のデータの項目の共通化を目指したため、通常のリハウジング作業時間よりも多い時間が記録作業に注力されました。■資料は、その後、環境を整え、順次整理作業が行われ、新たな資料の受け入れ態勢も整えられています。