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段ボール資料について
リハウジング対象となったのは、段ボール10箱に入った資料。家屋およびプレハブの物置に保管されていた学園関連資料を、史料室の関係者が受入れ、段ボールで50箱近くになる資料が運び出されました。その中で、プレハブの物置に保管されていた特に状態の悪い資料が10箱にまとめられ、保全する作業をTRCCが委託されました。
〔救出資料の状況〕
資料は、埃や塵にまみれ、泥汚れのように付着しているものもみられました。また一部の資料は、酸性の強い液体が染み込み、茶変色し、枯葉のように劣化損傷していました。湿気の多いところに長期間埋もれていたと思われる資料はカビも生じていました。
資料は、そのままの状態で段ボールに詰められており、汚れや劣化した状態で、卓上にての整理作業は出来ないものでした。クリーンで安全な環境で作業を行なうためにリハウジングの作業が必要とされました。
記録:記録についての考え方
受け入れ時の状況から紐付けられる情報(新しい状況から元の状態を辿ることができる記録)を残していくことは難しいものです。なぜなら大量の書籍、資料や遺物などが、床や崩れた棚に、泥や埃などと一種に埋もれている劣悪な環境下では、よほど経験豊富な作業者がいない限り、大まかに貴重そうな資料と、そうではない資料とを仕分け、段ボール入れをして現場から持ち出す作業だけで精一杯となるからです。
そのような現状を踏まえ、リハウジングの初動において個票(タグ)を作成し、箱番号から関連付けられる記録を、個票にチェック入れや書き込む方法で行なうことにしました。個票は容器収納し返却した後も資料と帯同することになります。〈一点ごとの状態記録は、所有者と協議の上で見送りました。〉
ドライクリーニング(第一段階):最初のクリーニング作業
今回は特に汚損の甚だしい資料でしたので、クリーニングを二段階に分けることにしました。段ボール箱から出し、大まかにドライクリーニングを行ない、資料を安全な保管庫内に収めることができる状態に持っていくことが目標でした。
他の作業スペースと隔てられた、換気扇の付いたスペースにクリーニングベンチと空気清浄器を配して、まずは第一段階めの作業を行ないました。資料は予想以上の汚れ、傷みがあり、ドライクリーニング作業ですら、短時間というわけにはいきませんでした。〔所要時間:延べ24h/一箱あたり、およそ2時間半〕
箱内での重ねの順序が崩れないように、箱内から一定量を取り出し、クリーニングベンチにて作業を行ないました。クリーニングは、資料の外側に面している部分と、埃が溜まりやすところなどの塵や埃を刷毛で払い、細かな部分については、次の作業に託しました。作業を終えた資料は仮置きのトレーに入れました。
トレーごとに、仮の番号を振りました(個票)。箱番号「1」から最初に取り出し、トレーに収めた資料を「1-1」。二番目に取り出した資料を「1-2」。最初の「1」は段ボールの箱番(大分類)。二番目の数字が、トレーごとの番号(中分類)となります。一箱あたり、平均10個程度に分けられたトレーは、プラスチックの大きなケースに入れ、箱番号(大分類)ごとに管理を行ないました。
ドライクリーニング(第二段階):綴じ金具・括り紐の除去とともに
今回の作業では、第二段階のクリーニング作業と劣化要因の除去作業と整形作業を一連の流れで作業を行ないました。
第一段階でトレー入れした資料を取り出し、さらに細かくクリーニングをします。大きな茶色の袋に入れられたり、紐で括られ束ねてある書簡類の束は、袋から出したり、紐を切って除去した後、埃や塵の溜まっている場所を丁寧に刷毛で払います。クリーニング完了の目安は、扱う際も塵が落ちず、手に汚れがつかない程度です。作業者の手も刷毛も黒く汚れるようだった資料も、作業後にはストレスなく扱えるようになりました。
劣化要因であるサビを生じた綴じ金具(ステープラーやゼムクリップなど)を除去し、代わりにステンレス製のゼムクリップで挟みました。(修復処置はしません)
整形・容器収納:
クリーニングと劣化要因の除去を行なった資料は、ある程度の束にして「スマファイ・L字エンベロープ」に収めます。その際、たとえば寸法が揃っている資料は揃えて飛び出しを無くしたりなどの整形を行ないます。
今回は資料の順序について厳密なきまりは無しとしましたので、前後に重なった資料の寸法が大きく異なる場合は、順番を入れ替え、なるべく資料が傷まない形を工夫したり、収める事にしました。なぜなら資料の大きさ・寸法が異なり、容器収納の際に、スペースを無駄にしてしまうからです。つまり、今回は収納スペースの効率化と、資料の保全(資料が変形や破損しないように養生する)を優先させたということです。
整形から容器収納作業に移った資料は、「スマファイ・個別ホルダー」で中分類ごとにまとめられ、大分類の区分け単位で「スマファイ・ファイルボックス」に収められました。(もし原則通りに、資料同士の重なりは現状を厳守する(順番は変えない)ことが求められる場合は、収納スペースを無駄にしても、大小のサイズはそのままの順序でで、容器収納を行なうことになります。)
第二次クリーニング作業では、ドライクリーニングと容器収納を含めて、一箱あたり、およそ5時間半の時間を要しました。
今回は劣化損傷の甚だしい資料がありました。これらは破損が進行しないように保護の包材が必要となりました。
返却後:整理・点検作業も容易に
段ボール10箱の資料は、最終的にファイルボックス42個(A4対応サイズ:39個 A3対応サイズ:3個)に収まり、スチール棚5段に収納され、整理・点検作業もスムーズに行なえるようになりました。