ご質問にお答えします
作業に関する質問
■虫食いや破損してしまった資料は、どのようにして修復するのですか?
閲覧ができないくらいに食べられてしまった資料は、裏打ちやリーフキャスティングを施せば、閲覧が可能なものとなります。リーフキャスティングは、「しなやか」で「厚みの増えない」修復が可能です。
■補修メニュー表などはありますか?たとえばリーフキャスティング、脱酸、虫喰いの穴ふさぎなど、1件あたりいくらほどかかるものなのですか?
エンキャプスレーションでしたら、基本の価格表があります。他はありません。修復作業が伴いますと劣化損傷の度合いで変わります。手仕事ですので、手数が増えれば、単価も上がります。手数を減らし、効果的な繕いが出来ていなければ、修復の質の低下につながります。所有者との打ち合わせが重要で、その際に、処置方法に基づいて、お見積りを立てさせて頂きます。
■ウェブサイトの作業工程を見ている限り、手作業が多いようですが、月の修復や予防、保護の受け入れ件数を教えてください。
月ごとというような短期間で案件がある訳ではありません。平行して何件かの仕事が進みます。また修復・予防・保護は、組み合わさって修復の設計がされます。設計は、初期の段階で所有者との間で打ち合わせを行ない、保存環境と利用の仕方で決めます。
■ひとつの資料を修復するのに、どれくらいの時間がかかるのですか?
30分で済むものもあれば、延べ10日以上、案件によっては何カ月もかかるものもあります。「かかった時間=コスト」ですので、クライアントの「懐の中身」と弊社の「経営」を考えれば、短時間で効果的な修復をするのに越したことはありません。早い安いうまい、が望ましいですが、作業員個人の経験と技術の引き出しの多少、手際のよさで、所用時間が結果としてついてきます。ボールスポーツと同じように、個々の力と監督の想像力が、ゲームメイクの勝敗を分けます。基本的にチームプレイですので、案件によりチームの人員を固定したり、だれでもその日にいる人が持ち回って担当したりします。 現場の混乱と判断の遅滞は、作業の進行に重大な問題を発生するので、現場指揮者(船頭みたいなもの)は固定します。独りよがりな作業にならないように、現場指揮者へのサポートが重要な課題となります。
■修復を行うときは、資料を 1枚ずつ広げなければならないのですか?
きちんとした接着と仕上がりを求めれば一枚ずつ広げなければなりません。手当てとして、解体しないで極簡単な補修を行なう案件もあります。
■水などで滲むものは、どのように修復するのですか?
すでに滲んでしまっているものは、覆水盆に還らず、いかにしても「修復不能」です。修復作業で滲みが出ると思われる箇所については、滲み留めの技法を用いて防ぎます。
■修復で、時間を要したり、工程が多かったりするなど、最も難しい作業は何ですか?
水に弱いもの、触ると崩れるもの、紙のもつ機能(しなやかさ・引張強さ・引裂強さ・対折強さ)が無くなってしまったもの。例えば、枯葉のようにパリパリになってしまったものに対する処置は、修理技術者の持つ「技法や理念の引き出し」の多さが問われます。いずれにしても時間を要するものは、コストがかかるので、クライアントと費用について、十分に話し合いが必要です。時間がかかっても、安価で丁寧な仕事は理想ですが、今の時代は、そのような緩やかでおおらかな時代では、残念ながらありません。
■脱酸処理ができているかどうかを、どのようにして確認するのですか?
脱酸性化処理をした資料のpHを直接計る、一緒に処理した試験紙を分析する、などの方法があります。