ご質問にお答えします

修復に関する質問

■カビが生えてしまったり、虫に食われてしまったりした資料はどのような修復を行なっていますか?

殺菌したり、補強したりすることが基本ですが、元の通りに戻ることはありません。カビによる変色は、漂白以外では除去できませんが、紙の繊維を傷め、寿命を縮める作業となります。万が一そのような作業を求められた場合は、東京文化財研究所などのサポートを得ながら、最小限のダメージになるような処置方法を探ります。ただし、調査費用は安いものではありません。

■修復した資料は実際に手にとって読むことができますか?

TRCCの修復の基本は、再び閲覧に供することができるようにする修復です。

■劣化した本がこの世に一冊しかなく、文字が見えない部分のある状態となってしまった場合、修復はどのようにしていくのですか?

修復は劣化損傷した資料を、再び安心して扱うことができるようにすると同時に、長期間、安定した状態を保つようにします。また遠い未来に再修復されることを念頭に入れて、材料と技法を選定します。それを踏まえた上で、「欠失部の補強を行なうのみ」です。そこから先の、欠損部に失われた文字を入れる、などの加筆は、利用できるようになり、十分に研究された後に、デジタル技術を応用するなどして、必要に応じて行なわれることであると考えています。

■どんなにひどく破損している書籍でも修復することできますか?

十分な予算の準備がありましたら挑戦しますが、「多大な修復金額」と「資料の価値」を天秤にかけて折り合いがつく、ということは、とても少ないです。

chara_23
■一度修復した資料が再び損傷してしまった場合、同じ修理方法を何度か繰り返しても、資料そのものに影響はでないのでしょうか?

当然、影響はあります。「資料の損傷」と「今後の資料の活用と保存性」を天秤にかけて、どちらを優先させるかという議論となります。博物館や美術館などで目にする文化財は、過去に何度も修復を受けながら、現在に永らえているものがほとんどです。 影響が有る無しに関わらず、文化財は時代を超えて、何度も修復を重ねて現在までバトンリレーされてきました。TRCCの扱う歴史資料は、ウブな状態で劣化損傷しているものが多いですが、近年の化学素材を使った補修で傷んだ資料の再修復も少なくはありません。

■どのような状態からの修復が、もっとも困難なのでしょうか?

過去の補修で、水や溶剤などでも溶解しない接着剤が用られているものの分離作業は困難を極め、物理的にオリジナル〈現物〉を破壊をしないと除去できないものがあります。また虫に縦横無尽に食べ尽くされ、ウェハースのような食害を受けた冊子は、開いても文字が判読できないほど損傷しているので、修復しても意味を見つけることは難しいです。また高湿度の環境下で微生物や酸性物質に犯されてしまい、もろもろの状態になったり、粉々になってしまう資料の修復作業は困難を極めます。