紙資料のアーカイブズを残すための整理術《大量修復の考え方》
資料を「残し」 「利用する」ためには、「群」として保存することが必要
所蔵資料は大量です。大量にあるものに対して、個々の資料に「一対一」の少量修復のような対応をしていては、どんな長い年月があっても整理は終わらないでしょう。大量にあるものには、大量のものを整理する方法で対処することが有効です。その方法が「大量修復」(mass conservation)の考え方です。「所蔵資料を群(グループ)として、どのように残すのか」。ここをしっかりと考えることができるか、できないか、で大きな分かれ道となります。
利用しやすいようにするにはどうしたらいいのでしょう?
せっかく整理しても、封筒に入ってしまって、確認するのに出し入れしなくてはならない、などとなってしまっては、利用も億劫になります。どのように「見える化」をするかが重要となります。
将来、処分されないようにするにはどうすればよいのでしょう?
誰から見ても、これは大事なものだと、思ってもらうことは大事なことです。整理する、と同時に、保存容器に収めることができれば、将来の廃棄行為に対しても抑止する効果が期待できます。
保存する史資料は、「文化財」ですか?いつまで保存しておきたいものですか?
保存容器は高価な保存用の中性紙保存箱でなくてもよいかもしれません。保存用の中性紙保存箱よりも、安価でも、しかも酸性紙ではない収納箱があれば、予算のなかで、より多くの容器を購入することができ、大量の資料を収納して、保存の大勢を整えることも可能なのではないでしょうか?
TRCCでは、所蔵機関のクライアント様と相互に意見を出し合いながら、「中期保存」目的の保存箱の開発を、ファイリング用品として形にしていますし、実際に利用も始まっております。
修復は、すべての整理がついた後に、傷んでいる史資料を抽出して、その時の予算に合わせて処置を考えるほうがよいのです。ですので、あとで容易に抽出ができるような保存の形にしておくことも大事なことです。博物館でよく取られる方法ですが、利用する時に、壊れてしまいそうで修復処置が必要な資料も出てきたときを捕まえて、保存処置をすることも合理的な手段です。資料が利用されて動いた時が、修復のタイミングです。
所蔵資料を個々として捉えず、群として捉えて、量とコストを考えたうえで効果的な保存処置を取ること。それが大量修復の考え方なのです。